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2019年 2つのダイビングクルーズ船が夜間の火災で沈没!! 他人事ではないよ!?
ダイビングクルーズ船の火災って、聞いたことありますか?
以前、インドネシアのMarmaid2の安全ブリーフィングで、
「部屋の中で充電しないように。
キャビンで充電した状態でダイビングに出て、帰ったら火災になっていて、賠償金1億円払ってもらった。」
と聞き、大げさな~、と思っていましたが、そうでもないようです。
目次
ダイビングクルーズ船の事故は珍しいことではない?
毎日、世界中では何百ものダイビングクルーズ船が、安全かつ楽しいダイビングを提供してくれています。
その裏で、壊滅的な事故が起こっているのも事実です。
簡単な検索で、2000年以降に少なくとも11件ものダイビングクルーズ船の火災記事が見つかりました。
2004年に紅海で火災を起こしたSea Queen IIは、アメリカ人3人が犠牲になりました。
2012年にはMandarin Sirenがインドネシアで燃えましたが、乗客は海に逃げて全員救出されました。
2019年9月にはアメリカでMV Conceptionが、11月にはエジプトでRed sea aggressorが、火災事故を起こしました。
しかしこの他、ほとんどのダイビングクルーズ船の火災は世界中には報道されていないのです。
日本の雑誌社も旅行会社も、こんな都合の悪そうな情報を発信することはないでしょう。
ダイビングクルーズ船で火災に遭わないために
2019年の2件の火災については、それなりの英文レポートが公開されています。
どちらも同じ問題をはらんでいるようなので紹介します。
燃えるのは仕方ないとしても、せめて逃げられるようにクルーズ船側に働きかけるくらいのことはできるかもしれません。
充電中の電池や充電器から発火したか?
どこが火元か、というと、充電中の電池や充電器が疑われているようです。
ダイバーならご存知でしょうが、現在のダイビングでは、
- カメラやビデオのような撮影機材
- ストロボやライト
などで大量に電気を使います。
ましてや、1日3~5本も潜るダイビングクルーズでは、電池の介護をしに行っているのか?と思うほどですよね。
リチウムイオン電池が発火しやすいことは、広く知られている通りです。
また船のコンセントから共有される電圧は一定ではなく、一瞬高電圧になったり、電圧が上下に揺れたりしているようです。
一瞬の高電圧の時に発火する(充電器が壊れた経験あり)ことも、じゅうぶん可能性あります。
- 充電場所については、ブリーフィングを守りましょう。
(決まった場所があるはずです) - 部屋を離れている間に、部屋のコンセントからはすべての電気製品を外しておきましょう。
火災報知機とキャビンからの脱出経路を確認しよう
11月のAggressorは幸いにして多くの人が助かっているので、火災についての証言が集まっています。
なんと!!火災報知器が鳴っていなかったそうです。
クルーズ船に乗ったら一番に、船内設備の説明をしてくれるはずなので、その時に、
「火災報知機の動作確認させて」
と頼んでみましょう。
できなかったとしても、安全意識を持っているお客だと、スタッフに意識付けできるでしょう。
そして、避難経路を確認しておきましょう。
メインの階段だけでなく、いざという時のために脱出用ハッチを上っておいてください。
夜間の警備・安全確認体制を確認しよう
一般的に、クルーズ船には、夜間は走行していても停泊していても、定期的に船内を見回ることが義務付けられているそうです。
豪華客船ではこのルールは守られていますが、ダイビングクルーズのスタッフが交代で安全確認のためによる起きているのかというと、そうでもないようです。
火災報知機と同じく、知っていることをスタッフに伝えるために、
「夜の確認(Night watch)してますか?」
と確認しましょう。
また、スタッフ全員が寝ている可能性もある、と認識しておきましょう。
参考までに、おぞましい2件の火災について、詳細を説明しておきます。
2019年9月 ダイビングクルーズ船コンセプション号の火災~沈没事故
ダイビングクルーズ船の火災のこれまでの報道とは違って、日本でもセンセーショナルに報道されたのが、アメリカのダイビングクルーズ船「コンセプション号」(MV Conception)の火災事故です。
事故の経緯
事故の経緯は次のように報道されています。
現地時間2019年9月2日午前3時頃発生
当時、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタバーバラ郡サンタクルス島沖合に停泊していました。
午前3時14分の緊急通報を受けて、沿岸警備隊が消火、救助に向かいましたが、船は消火作業中に沈没しました。
船の上の階の操舵室にいたキャプテンと4人の乗員は海に飛び込んで逃げて、別の船に救助されましたが、下の階で寝ていたお客と他のスタッフは逃げ遅れました。
助かった5人が気付いた時には、操舵室と客室の間の2層目のギャレーとサロンが炎で包まれていて、上から下に助けに行くことも、下から上に逃げることもできない状態だったそうです。
9月3日に20人、9月4日に13人の遺体を引き上げました。
9月5日にアメリカ沿岸警備隊は捜査と救助を打ち切り、39人の乗客のうち34人の死亡が確認されました。
残りの犠牲者が引き上げられるまでに、約2週間かかりました。
事故の原因は?
火災は、発生原因を特定できる証拠が燃えてなくなってしまうため、原因解明が難しいとされています。
そうでなくても、焼けた船が海に沈んでしまっては、さらに原因の分析が難しくなってしまいます。
そんな中で、事故の原因として、2つの可能性が考えられているそうです。
定期的な見回りをしていなかった可能性
船のスタッフは、夜間は定期的に船内を見回らなければなりませんが、スタッフ全員は、火災発生当時、寝ていたそうです。
定期見回りをしていなかったので、火災の発見が遅れた可能性が指摘されています。
寝ていたのがほんの一瞬だったら、早く気付くことができたら、消火できていたかもしれないし、下層まで下りてお客や同僚を起こすことはできたことでしょう。
充電中の電池類から発火した可能性
当時、ダイニングエリアの充電ステーションで、たくさんの電池が充電されていたようで、これが火元と考えられているようです。
よく言われるように、リチウムイオン電池が燃えたのかもしれません。
そもそもあやしいクルーズ船だったのでは?
コンセプション号なんて、初めて見ました。実績無く、安全性のあやしいクルーズ船なのでは?と思い、調べてみました。
この船は、Truth Aquaticsという会社が運航しているようです。
Truth Aquaticsは1974年に創業し、カリフォルニアのダイビングクルーズの先駆けとなった会社です。
ダイビング用にカスタム設計された
・MV Truth 1974年就航
・MV Conception 1981年就航
・MV Vision 1985年就航
の3艘の船で、クルーズを行っていました。
事故前まで、カリフォルニアのNo.1ダイビングクルーズを誇っていたようです。
Truth Aquatics / www.truthaquatics.com
この事故のニュース記事へのリンク
BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/49560277
AFPニュース
https://www.afpbb.com/articles/-/3242638
CNNニュース
https://www.cnn.co.jp/usa/35142099.html
ダイビングクルーズ船レッドシーアグレッサー号の火災
コンセプション号から2か月たたずに火災、沈没事故を起こしたのは、Red Sea Aggressor I(正式名称はMY Suzanna)。
2019年10月26日エジプトのMarsa Alamを出港し、一週間の旅も終わりに近づいた11月1日の真夜中過ぎに火災が発生しました。
このクルーズ船も3層の構造で、多くのダイバーが下の階のキャビンで寝ていたところ、中央階のサロンで火災が発生しました。
サロンに通じるメインの階段を上がって逃げようとしたところ、煙と熱でこの階段を使えず、前方の緊急脱出用ハッチを使用しようとすると、スタッフがハッチの横にマットを置いて眠ていたため、ハッチは少ししか動かせなかったそうです。
必死にスタッフを起こし、なんとか上の階に上がり、海に飛び込んで命拾いできたようです。電気機器のカバーのPVCが燃える臭いが漂い、火の手はあっという間に回り、ダイバーの一人は避難があと30秒遅れたら生き残れなかっただろうと話しています。
一方、上の階で寝ていた人は恐ろしい現象を見たようです。サロンの外でスタッフがダイビングマスクを着け、消火器を持ってドアを開たところ・・・ 新鮮な空気からの酸素の供給により爆発したような炎の塊が噴出。
ダイビングデッキのタンクは、火の熱で爆発し始めました。
火災報知機は鳴らず、スタッフから救命胴衣についての指示もなかったと証言されています。
それぞれ海に飛び込むか、クルーズ船の後ろに引っ張っているダイビング用のボートに乗り、救助されました。残念ながら一人が犠牲になりました。
充電中のリチウムイオン電池から出火したか?
乗船直後の安全ブリーフィングでは、
「充電ステーションはサロン内にあり、スタッフが常駐して監視する」
と紹介されていたようですが、実際のところ、スタッフは監視していなかったようです。
ただし、サロンの外にいた人から、炎はサロンの反対側に見えた、との証言もあり火元は分かっていないようです。
この火災事故はマスコミ報道されていない
Aggressorは米国の会社であり、亡くなったのもアメリカ人ですが、米国のメディアには詳細情報が伝わっていないようで、この火災はマスコミ報道されておらず、ダイビング雑誌などが情報を広めているのみです。
Aggressor情報の参照元
https://www.undercurrent.org/UCnow/dive_magazine/2020/RedSeaAggressorOne202001.html
Publisher : Undercurrent
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